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信号を待つそのあいだにプロポーズをする人もいるだろう。 逆に別れ話を切り出される人もいるかもしれない。 親の仇のように信号機の赤を睨みつけて 貧乏揺すりをしながら待つ人もいるだろう。 各種の素振りをする人もいるはずだ。 バレエ教室で習った動きを思い出して 頭の中でトウシューズを履いた自分をうっとり想像する 女の子もいるかもしれない。 駅前ビル4階の社交ダンス教室で習ったステップを 軽く踏んでみる48歳会社員もいるかもしれない。 それらを背後から眺めて どう切り取ったら絵になるかな、と 指で四角を作ってのぞき込むカメラ青年も いるかもしれない。 本を取り出して読むほどでもないア・リトルな時間。 何をするってほどでもないトリビアルな時間。 日常にふと魔が差すように訪れる エアポケットのような空白の時間。 短すぎて計画を立てるほどでもない時間だからこそ 自分の本質が現れ ちょっとしたドラマが展開されなくもない 信号待ちの時間が・・・ とある文明の利器によって 画一化されつつある。 そう。 皆さんご存知、 電子レンジ。 ではなく スマートホンである。 ちょっとした時間をつぶすのに圧倒的に優位な道具、スマートホン。 スマホは信号待ちのドラマをすべて破壊し 信号待ちの時間を うつむいて液晶画面を眺めるためだけの時間に 劇的に変質させてしまったのである。 なんと恐ろしい悪魔的な発明であろうか。 開発者は知っているのだろうか。 自分が開発した道具によって 誰の人生にも平等に幾度となく立ち現れる どうでもいい時間が絶滅の危機に瀕していることを。 私の中のレッドデータブックにはすでに掲載済みの 絶滅寸前の信号待ちの自由時間を救える救世主が じつは存在する。 目印は 両肩に背負った黒か赤の箱形の紋章。 (地域によっては)頭頂部に装着されているあごひもとつば付きの黄色い冠。 それは、現代社会で携帯電話を所持することが許されていない希少な種族、 通学中の小学生である。 かつてあなたもその一員だったはず。 信号を待つあいだ 赤が青になるまで、頭の中で(パイナップル何回言えるかな)と 指折り数えて(パイナップル、パイナップル、パイナップル…)と呟き続け 次第に(プルパイナッ、プルパイナッ、プルパイナッ…)となってしまう小学生。 青になったら渡らなくてはならない 「横断歩道の白い線以外を歩いたら地獄ね」を目の前にして 心を整える小学生。 信号待ちでいじめっ子に追いつかれてしまうのに怯えて 逃亡中の指名手配犯のように後ろを何度も振り返ってしまう小学生。 スターティングスタイル、またはクラウチングスタイルで 出発の合図を待つ小学生。 救世主たちの演じるバリエーションは無限だ。 小学生たちよ。 君たちは危機に瀕した 〈ヒマな時間のどーでもいい使い方〉を 救うべく神がつかわした天使である。 今こそフレッシュな感性を総動員して 信号待ち時間の使い方をひねり出すのじゃ。 ちなみに私は信号を待つあいだ
by mitakapurin
| 2016-01-15 10:05
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