検索
記事ランキング
カテゴリ
ブログパーツ
以前の記事
その他のジャンル
|
来週20日はハーモニカ横丁の朝市ですね。 ストーリー形式でハーモニカ朝市を紹介します。 基本はフィクション、ところどころノンフィクションです。 *+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+*
ときは7月、日曜の朝。 ところは吉祥寺駅近く。 素朴を絵に描いたような顔立ちの娘が 吉祥寺のおしゃれな通りで息も絶え絶えになっていた。 顔色は青ざめ、瞳孔が開き気味、全身が小刻みに震えている。 「もし、大丈夫ですか? 素朴な顔立ちをしたお嬢さん」 見るからに人の良さそうな中年の夫婦が素朴娘に声をかけた。 「あの、持病の発作が・・・」 娘は肩で息をしながら答えた。 「発作、とな。なにか薬をお持ちですかぁ?」 やや恰幅がよくなりかけたメガネの夫がたずねた。 「いいえ、この持病に効く薬はまだ開発されていなくて」 「この時間でも開いてる病院知ってますよ〜。一緒に行きます?」 地元民らしく土地のことに詳しい妻(こちらもメガネ)は 頼りない足取りの彼女を支えながら親切にそう言った。 「病院に行くほどのことではないんです。ただ」 「ただ?」 夫婦がそろって娘の言葉を問い返したとき。 ガラガラガラ。 近くのおしゃれな雑貨店のシャッターが開いて おしゃれなナチュラルファッションとメイクをした店員が おしゃれな書体で『we are OPEN』と書かれた おしゃれなデザインの立て看板をおしゃれな仕草で店先に出した。 そのとたん、素朴娘は胸を押さえて苦しみ始めた。 「ああ!苦しい」 「たいへん!早く病院に」 「待ってください!・・・とにかく・・・ ・・・あまりおしゃれすぎないところに・・・私を連れて行って下さい」 人のよさそうな夫婦は顔を見合わせてつかの間相談した。 「あまりおしゃれすぎないところっていえば、ねえ」 「あそこだったらいいんじゃないかねぇ、うん」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ かくして3人は吉祥寺駅北口前のハーモニカ横丁へと向かった。 横丁入り口目の前のベンチに娘を座らせると 妻の方はなにやら縁起のよさそうな手ぬぐいで娘の額の汗をぬぐってやった。 妻「こんな場所でいかがですか。おしゃれすぎますか?」 素朴「いいえ、おしゃれすぎません。ちょうどいいです。 じつは私、おしゃれ恐怖症という病気で・・・」 夫妻「おしゃれ恐怖症!?」 素朴「はい。中学時代の修学旅行で原宿に行ったとき、東京の女の子に 『いなかもんはダサいからクニへ帰れ』ってディスられてから、 おしゃれなモノに近づくと 動悸息切れ震えめまいが襲って来て倒れるようになってしまって」 夫「ふ〜ん、それは大変ですねえ。 しょせん東京は田舎者のたまり場として発展した町なんだけどねえ。 ま、とにかくこのへんだったら大丈夫でしょ」 素朴「あの、ここは一体? 私まだ上京したばかりでなにもわからなくて」 夫「ここはハーモニカ横丁と言いましてね、戦後のなーんにもなかった時代、60年以上前ね、そんな時代にヤミ市として町の復興を行った場所なんですよ。そんなルーツがあるもんだから今も入り組んだ細い路地の中にこぢんまりとした商店が混沌と並んでよく言えばレトロ、簡単に言えば古〜い雰囲気を残しているんですよ。実は新しい店も多いんだけど、なぜか違和感なく調和しているのがこの横丁の魅力になっているんですね。ただ古いだけじゃなくおしゃれなお店が…おっと、魅力的な小さなお店が、ね」 素朴「小さなお店がたくさん」 妻「そうだよ〜、ハーモニカの吹き口みたいだから、ハーモニカ横丁。 横丁を取り壊してビルを建てるっていう再開発の話はときどき出るみたいだけど、 いまのところ昔のまんま。中華屋さんとか、花屋さん、魚屋さん、あと、メンチカツで有名なサトウってお店もけっこう古いよね〜」 素朴「じゃあ私、勇気を出して今夜遊びに来てみます」 夫「夜のハーモニカ横丁も楽しいんですがねぇ、 初心者としてはまず朝市に来てみてはどうでしょう。 毎月第3日曜日の朝7時から10時ごろ、 まだシャッターの閉まっている店舗前スペースを利用して その道のプロからセミプロのようなお店まで50以上も並ぶからおもしろいですよぉ。 色々な国籍の朝ご飯、古本、古道具、パン、焼き菓子、飲み物・・・お店の人と軽口を叩きながら品定めをするもまたよし。デートにもぴったりですよねぇ、朝市で買ったものを井の頭公園で食べるのも楽しいですし。それからお客としてだけでなく、申し込めば自分で作ったものを売ることだってできますよ」 素朴「!・・・・・・」 夫の言葉を受けてなにごとかを真剣に考える表情の素朴娘。 突然叫ぶようにこう言った。 「私、くるみゆべし売ります! 実家の母が作るくるみゆべしがとってもおいしいんです! このおいしさを東京中に広めたい! あのっ、どうしたら出店できるんですかああああ」 夫「がくがくがく(娘に襟首をつかまれて揺さぶられている)」 妻「とりあえずこのホームページ検索してアクセスしてみて」 妻が渡したメモ書きには『ハーモニカ横丁朝市』とあった。 「この先の人生の目標まで教えて下さって本当にご親切にどうもありがとうございました!」 メモを握りしめておしゃれな町を走り去って行く素朴娘の後ろ姿はもう燃えるゆべし娘になっていた。 ぼうぜんとその場に取り残された2人。 「彼女とは次回の朝市でまた会うことになりそうだね〜」 「ゆべしもいいけど、朝飯何にしようかぁ」 意見を交わしながら歩く二人の後ろを野良猫が横切った。 おしまい *+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+* いかがでしたか。 今月プリン屋は出店しませんが、 ふところにナイフ数本をたずさえて 参上する予定です・・・ (研いでもらうため)。
by mitakapurin
| 2014-07-11 19:26
|
ファン申請 |
||